ユルトの国王・ホンギルドン

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(現存する「洪吉童伝」の最初のページ:ウィキペディアより)

ギルドンのユルト国~人間として生きる(2)

伝承のロビンフッドがシャーウッドの森の義賊ならば、実在のホン・ギルドン(洪吉童)は京畿道や江原道で活躍した義賊。
小説「洪吉童伝」に関することは、これまでもウィキペディアなどから紹介しましたが、『朝鮮王朝実録』にあるギルドンの実像と、小説作家の紹介は次のとおりです。

1.朝鮮王朝実録』にあるギルドンの実像

<朝鮮王朝期代>第15代王・光海君の頃に書かれた小説『洪吉童伝』の時代背景は第4代王・世宗(セジョン)の時代です。
次の書の記述により、『洪吉童伝』の内容を紹介します。
朴永圭(パク・ヨンギュ):訳・神田聡、尹淑姫『朝鮮王朝実録』キネマ旬報社、2012年3月、p.290(全491ページ)

<作家による解説>では次です。

この作品は義賊を主人公とした英雄小説であると共に、両班家庭の庶子差別の不合理に抵抗した社会派小説でもある。
また、理想郷を描く楽園思想を含み…(略)。

<その小説の内容>

主人公のホン・ギルドン(洪吉童)は洪判書(ホンバンソ:①)の庶子として登場している。
彼は幼い頃から非凡な気性で、武術が得意だった(②)。
しかし、身分が低いために世の中の不条理に恨みを抱くようになった。

洪判書の家族たちは、ギルドンの非凡な才能が将来に災いを呼び起こすだろうと思って刺客を使って彼を殺そうとする。
この事実を知ったホン・ギルドンは家を出て、盗賊の頭となって“活貧党(ファルビンダン)”を組織して義賊の生活を始める。
ホン・ギルドンの義賊としての行為が噂となって全国に広まると、各地で同じ名前の義賊団の組織が生まれ、“王命”によって逮捕された洪吉童だけでも300名に至った。

しかし、本物のホン・ギルドンを逮捕できなかった朝廷は、その父親の洪判書に息子を懐柔させた上で、妥協案として彼を兵曹判書(ピョンジョンバンソ:防衛大臣)に任命する。

ホン・ギルドンは一時期、兵曹判書を務めるものの、中国・南京に出発することを決意して祖国を仲間と共に離れる。
その途中で、山水秀麗なるユルト国を発見して、そこを支配していた妖怪たちを退治。
ユルト国の国王となる。

その後、父親の洪判書の訃報に接し、一時帰国をして3年間の喪に服する。
そして、その後はユルト国に戻って、そこで王としての生活をするところで物語が終わる。

①ドラマの第8話から、アモゲは“クムオルシン(大長老)”から、ホンオルシン(長老)と呼ばれました。
②ギルドンは“万能の子(英文字幕:Mighty Boy)”なので、愛称をマイティボーイとしました。

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<マイティボーイのギルドン>

小説「洪吉童伝」は、比較文学での考察では、中国・明の時代の「水滸伝」、「三国志演義」および「西遊記」などの影響を受けている。
そして、“変身術”、“瞬間移動”、“分身術”および“空飛ぶ雲”を含む(②と同じ)。

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(「西遊記」:ウィキペディアより)

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(「水滸伝」「三国志演義」:ウィキペディアより)

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このモデルは1500年(燕山君6年)に京畿道・加平(カピョン)と江原道・洪川(ホンチョン)を中心として活躍していた有名な義賊・洪吉童と…(略)。
(# そのほかの第13代王・明宗時代の義賊など…です)
ホン・ギルドンの姓の“洪”の由来だと思います。

2.小説「ホンギルドン」の作家

許筠(ホ・ギュン:1559~1618)が小説「洪吉童伝」の作家でした
彼は最初のハングルでの小説作家でもありました。
また、小説の執筆の時代は第15代王・光海君(クァンヘグン)の時でした。

映画『光海~王になった男』では最後の字幕で次のように紹介されます。
…翌年8月、都承旨のホ・ギュンは王朝転覆(#)の罪で斬首に、
5年後に光海は廃位された。
光海は土地を持つものだけに課税し、
民を救うために、明と対峙した唯一の王である。
(映画より)
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http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-3063.html
# 王朝転覆とありますが、
これは小説「ホンギルドン」が身分差別のない民主主義の思想で書かれた小説だからだと言われます。
ホ・ギュンは革命的な思想家でした。
この映画の15日間はまさにホ・ギュンとハソン(影武者)が夢見た理想の国家のため。
また、
光海君が“大同法”を制定し、冊封制度による清への”事大主義”に反発したことは史実です。

3.海から山へ

先日はアモゲが活躍した江華島(カンファド)などが点在する西海岸の地図を開きました。
実在したホン・ギルドンの活躍の場所は韓国半島の中心に位置する京畿道(キョンギド)と江原道(カンウォンド)のようです。
上記の江原道・洪川(ホンチョン)が拠点だったようです。

ソウル特別市を北、東、南とドーナツ状に囲むのが京畿道で、その東が江原道です。
ドラマ『青い海の伝説』の始まりのシーンは江原道の東海岸の草束(ソクチョ)あたりでした。
下の地図の中央の山岳部にギルドンは山城を築いたのではないでしょうか?

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4.さてユルト国とは?

ドラマのエンディングは小説に従って、ギルドンが新しく建国するユルト国だと思います。
勝手に想像しているファンタジーですが、先週振り返った『六龍が飛ぶ』のプニの村のイメージです。
でも、どこに位置するのか?

大陸(明国)と韓国半島を分けるのは、自然の国境の“鴨緑江(アムノッカン)”です。
旅商人だったギルドンがコンファに言いましたように、ここは“緑の水”の川。
(# コンファも夢見た“緑の水:ノクス”)

ギルドンが新しく築くユルト国はアムノッカンの南(半島)でしょうか?
それともアムノッカンを渡った北の大陸部(明国領土)でしょうか?

以上、小説に焦点を当てましたが、史実に沿って流れる燕山君の王政と小説「洪吉童伝」との時間の流れを上手く合わせたドラマの演出となっているようです。

今週放送された第12話で「戌午士禍(ムオサファ)」が起きました。
燕山君即位4年目のことです。
上記にあるように、…このモデルは1500年(燕山君6年)…ですから、もうしばらくするとギルドンと燕山君の対面があるのではないでしょうか?

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高麗時代の方が女性の発言力があったそうで、女性が伸びやかだったとされます。
カリョンがアモゲに、「ギルドンオラボニは“女だからといって、炊事や洗濯をする必要はない”って、変なことを言うのですよ」と言っています。
アモゲは微笑んで聞いています。
彼女自身も伸びやかな性格だと思いますが、アモゲも妻のクムオクに、「仕事は俺がやる」と洗い物をしていました。

燕山君の時代は、先王が士林派を登用したために、身分制度、男尊女卑、他宗教(とくに仏教)排斥を旨とする朱子学の思想が強い風潮でした。
もちろん、それによって国は平穏を保っていた…。

しかし燕山君は、士林派は儒教本来の思想ではないとして、嫌いました。
今週放送された第11~12話が「戌午士禍(ムオサファ)」です。
燕山君にとっては、絶好のチャンス到来が第12話で描かれます。
また、
その士林派排除の名分となる公文書を発見するのがギルドンの兄のギルヒョンです。
山小屋で見つけたパク家第31代という高官の遺書に従って、ギルヒョンはパク・ハソンと名乗り、科挙試験に合格しました。
「朝鮮王朝実録」の編纂部署に配属されたからでした。
(このパク氏は第5代王・文宗に仕えた人でした)

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