実録 イ・サン 1


英祖の決断
-サンの即位問題-


李祘(イ・サン:後の正祖・チョンジョ)の祖父・英祖が81歳の時(1775年11月30日)、高官たちを集めて言いました。
気力が失せてきて政務が難しくなったからです。

# 英祖(ヨンジョ)は<朝鮮王朝>第21代王。
 ドラマ『トンイ』にあるように、
 淑嬪・崔氏(トンイ)の息子・ヨニングンです。

「兵曹判書(ピョンジョバンソ:軍務の役所の長官)を誰に任せるべきかを知っているか。吏曹判書(イジョバンソ:官吏・人事を統括する役所の長官)についてはどうか。
(中略)
まだ若い世孫であるが、“代理聴政”をさせるということも王朝の故事にあったことだ」

# 若いとはいえ、もう世孫のイ・サンは23歳の時です。

しかし、左議政(副総理)の洪麟漢(ホン・イナン)は、

「世孫は老論も小論も知る必要はないし、兵曹判書も吏曹判書を知らなくても問題ありません。さらに言えば、朝廷のことも知る必要はないでしょう」

# なんという暴言でしょうか?!
洪麟漢はサンの母親・恵慶宮洪氏の叔父、サンの大叔父にあたります。

老論派や他の高官は、ここぞとばかりに洪麟漢に同調します。
そこで、一端解散させて、時間をおいて議会を招集。
怒りを抑えただろう英祖はさらに言います。

「緊急でない政務は世孫が担当し、上訴された案件や緊急なことは余が世孫と協議して決める。何日か過ぎて、これらに慣れてきたら、さらに王命を追加する」

これにも反対する老論派。
王の言葉を文書にする承旨(スンジ:王の秘書)に、筆をとらせないという実力行使を行います。
また、洪麟漢は王命を中止するようにと要請しました。

怒り心頭に達したと思われますが、英祖は冷静を取戻し、最後に切り札を使います。
「では、巡監軍(スンガムグン)を世孫の配下につける。巡監軍を東宮の配下に置くことは300年間の故事にもあることだ」
こうなると、老論派も一歩引き下がります。

史実 サン1
映画『王の涙』より。
この映画は英祖がなくなり、サンの即位後間もない頃の“ある蒸し暑い日”の話です。

# 巡監軍とは王の配下にある軍隊。
その全軍がサンの下に置かれることになり、事実上は王と同じだけの軍事力を持つことになりました。
ドラマ『六龍が飛ぶ』では、宮中(この場合は高麗の首都・開京ですが)を守る兵士が5000人とのことでした。

英祖が巧みに故事を引き合いに出すことで、力を持って“代理聴政”に移行させました。
この3か月後に英祖は亡くなりますので、これが最後の“大きな王命”と言えるでしょう。

サンは1776年の3月10日に漢陽(現・ソウル)の一番西にある慶熙宮(キョンヒグン:경희궁)で即位式をあげました。
サンは9月生まれなので、この時は23歳です。

(慶熙宮の正殿への崇政門)
suusei.jpg

(崇政殿)
崇政殿
(2014.09 撮影)

ここは、第15代王・光海君が旧・李成桂(イ・ソンゲ:初代王)の私邸跡に離宮として建てました。

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これから数回に亘って「実録イ・サン」をアップしたいと思います。
引用・参考にしているのは次です。

康煕奉(カン・ヒボン)『謎めいた朝鮮王朝』双葉社(2015.04)
映画『王の涙(韓国原題「逆鱗」)』
ドラマ『イサン』

なお、『謎めいた朝鮮王朝』は、『朝鮮王朝実録』に基づくもので、「実録」は歴代の王の日誌。
歴史研究家や脚本家にとっては貴重な記録です。

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