オ・チヌファンの写真集より

オ・チヌファンの写真集より…日本の街並みに息づく『古き西洋』

私自身は、決して海外かぶれではないと思っている。
派手だが、どこか空疎な海外旅行より、古都鎌倉や1000年の時を重ねる京の街を散策する方が好きである。
仕事も含めて海外も19ヶ国に出かけたが、この感覚は二十代の頃から変わらない。

大阪に5年ほど単身赴任していた時代がある。
休日と言えば、好きなチヌ釣りの季節以外は、毎週のように手弁当を携え、住まいのある西宮から京都まで出かけていた。
何故か、人を誘ったことは一度もない。
いつも独りで、行きたい古刹や見たい禅庭、仏像を選んでいた。
人を誘わなかったのは、単にそれらを見たいというより、自分なりに、味わい尽くしたかったからであろう。

そんな自分でも、長い歴史を通じて日本の街並みに息づく『古き西洋』があることを知っている。
あるいは、和の佇まいの中に自然と息づく『西洋風なる印象』を発見するときがある。
そして、決してそれらを嫌いではない。

嫌いどころか、ある種、不思議なノスタルジアをもって接し、まるで前世から触れていたような捉えどころのない懐かしさを伴って対峙する事すらある。
それが誕生した時代には、自分は生まれておらず、覚えてもいない前世から発するノスタルジアなど、実に矛盾した感覚なのだが、その交差感覚も、また心地よい。
右脳だけが全開で生きている感覚だ。

長崎の大浦や神戸北野の風景、もし函館ならばハリストス正教会の周辺、横浜なら外人墓地の佇まいなど、そんな対象は幾つもある。
あるいは、そんな誰もが出かける観光地のみに固執せず、地方の小都市の中に息づく『古き西洋』を探してみる旅も、また一興かも知れない。

何枚か、写真を見てみよう。
何かしら、出所不明の懐かしさを感じてくれれば有り難い。
ちなみに、「チヌ」とは「クロダイ」に対する関西固有の呼び名であり、英名では、Black seebreamだ。その独特の釣趣により、海釣りでは、根強い人気を誇る魚である。蛇足だが…。

1.松江市・興雲閣

明治36年(1903)、明治天皇の御宿所として、松江城内に建てられた擬洋風建築の迎賓館。
昭和44年島根県指定文化財。

松江市・興雲閣

2.札幌市・豊平館

明治13年(1880)、北海道開拓使が建造した当時の最高級ホテルであり、最初の利用者は、明治天皇とされている。
後に公会堂となり、昭和33年に現在の中島公園に移築された。
昭和39年重要文化財指定。

札幌市・豊平館

3.長崎市・英国領事館職員住宅

長崎英国領事館は、明治40年(1907)にウィリアム コーワンの設計により建造された西洋館である。
写真は、当時のままに保存されている職員住宅。木造二階建てとレンガ作りの二階建が連結する珍しい建築様式だ。
平成2年重要文化財指定。

長崎市・旧英国領事館職員住宅

4.京都市・南禅寺水路閣 (なんぜんじすいろかく)

琵琶湖の湖水を京都市内まで運ぶための長大な水路は、二段階の時期を持って完成したが、第一段は、明治23年に完成している。
その水路の一部は、臨済宗南禅寺派本山である南禅寺の境内に建てられており、古刹に溶け込む西洋建築として不思議な情景を醸し出している。
2時間ドラマでは、定番のごとく使われる借景であるが、この写真ではガイドさんに写真を撮ってもらう女子高生たちの明るい表情が微笑ましい。おそらくは修学旅行の一こまであろう。
その、楽しげな女子高生たちのすぐ後ろに立つ西洋式橋脚は、既に生まれて120年が経過している。
まだ、あどけない子供たちの表情と古色蒼然とした歴史の表情。
そんな不思議な対比を見つめていると何とも言えない優しげな気持ちにひたれるのである。

京都市・南禅寺水路閣

5.ハリストス正教会遠景

ハリストス正教会と呼ばれるものは、日本国内だけで11箇所あるらしいが、これは函館市元町のそれである。
安政5年(1859)、当時のロシア領事が、この地に聖堂を建てたのが源流であるが、明治40年(1907)の函館の大火により消失し、その後、大正5年(1916)に再建された。
昭和58年(1983)重要文化財指定。
大正時代の建物としては、全国で二番目の指定である。
また、函館ハリストス正教会の鐘の音は、日本の音風景100選にも選ばれている。

ハリストス正教会遠景

6.京都市・龍谷大学 (りゅうこくだいがく)

370年もの伝統と歴史を誇る京都の仏教系私立大学。
本部は京都市伏見区。寛永16年(1639)に西本願寺が設立した学寮がその起源であるが、その後、幾多の変遷を経て1922年の大学令により、龍谷大学となった。
写真は、明治12年に落成した大宮学舎本館。
昭和39年(1964)、国の重要文化財に指定された。
西本願寺辺りを散策していると、和の香りの中に突如として現われる『古き西洋文化』である。
仏教系伝統校の歴史の奥に息づく西洋文化には、同じ関西でも同志社や関西学院にみる洋館とは、 また一つ異なる趣きがあるのかも知れない。

京都市・龍谷大学

7.トラピスト修道院

トラピストA

北海道北斗市にある修道院であり、カトリック修道会の一つであるシトー会の男子修道院。明治29年(1896)、ベルリオーズ司教らの手により開院した。
この修道院で作られたバターやクッキーは有名だが、雪積もる冬の日などは、静寂と荘厳さに旅人のこちらまで緊張を強いられる。
そこに一切の邪念を寄せつけぬ凄みを感じるからだ。
若い女性同士の旅人ですら、修道院の壁が眼前に近づけば、言葉を失い、黙り始める。
ここでは、どんな美しい言葉でさえも、その静寂と荘厳を傷つけるだけの破壊者だと知るからだ。
私は、まっすぐの道を歩き、正面にトラピストの壁が近づくと、ふいにその場に立ち尽くし、涙する旅人を二度も見た。
日本では、数少ない類の場所であろう。
このトラピスト修道院の空気に触れたくて、初夏や晩秋の頃にも出かけたが、厳寒期の朝を狙い、神奈川から二度、大阪からも一度、いずれも独りで出かけた。
厳寒期を選ぶのは、観光客が少ない事と、出来れば純白の雪を伴って欲しいからだ。
函館駅から電車か車で1時間程度だから、厳寒期と言ってもそれほどの寒さではない。
どうぞ、ご安心を。

今回の写真に映る地は、全て心に深く残っているが、このトラピスト修道院…、可能であれば、明日にでも、また訪れたい場所だ。
貴方にも、ぜひ薦めたい日本の中の「古き西洋」である。

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以上 写真および文: オ・チヌファン                                                    

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