映画「思悼(サド)」 その(6)

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(2016.06.18)

思悼(サド) その(6) 昇竜の舞

クムチョン橋

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# ここから映画は最初の場面に戻ります

♪今日の霊魂、霊魂が来られましたのなら、
みなみなと珍味を召し上がって…
酒を一杯を感応して…
残った寿命と福があれば子孫に引き継がれ…
法師の法門を受けて極楽へと向かい…

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「チョハ!」

「どけ!」

「なりません、チョハ。
 お考え直して下さい。 これだけはなりません」

「存在自体が謀反だと言うではないか。
 見せつけてやる」

「なりません!
 それだけはなりません!」

「そこをどけ!」
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「オモニ!
 今、世子が刀を持って、
 慶煕宮(キョンヒグン)に向かわれました」

「アイゴ…」

「もしも殿下(チョナ)に何かあれば…、
 今からでも止めないと世子だけでなく世孫も…、
 みな死にます」

「…」
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♪南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…

「…」
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荘献は英祖と息子(サン)の会話を聞きます

「ははは、さすがは私の孫だな。
 ところでこの前はお前の父が英ビンの還暦を祝ったそうだな」

「そうです」

「お前も4回敬拝したようだな?」

「はい」

「お前の婆さんは一介の側室に過ぎないのに、
 なぜ王と王妃にだけする敬拝を4度もしたのか?
 それは間違いの礼であろう。
 なぜなのか?」

「私はおばあ様が王妃ではなくとも、
 百回、千回も敬拝申し上げます」

「なぜなのか?」

「人があって礼があるものです。
 礼儀があって人がいるのはありません。
 孔子も礼法の末端を見るのではなくて、
 礼の心を見ろとおっしゃいました」

「…」

「あの日は父の心を見ました」
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「…」
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<米櫃7日目>

英祖と荘献

「40を過ぎてお前が生まれた時はどんなに嬉しかったことか。
 生まれたばかりのお前を世子にして、
 王道を学ばせることにした」

「…」

「その時にお前が見せてくれた聡明さと知恵を私は忘れられない。
 しかしこのところのお前は刀を振り回し、
 犬の絵を描き、勉強をおろそかに…、
 この世の終わりが来たような気がした」

「だから私を臣下を前にして、
 案山子のように馬鹿にしたのでしょうか?」

「一人前の王にしたかったからだ。
 お前がしくじるたびにどれだけ気をもんだことか」

「なぜそれが私のしくじりなのでしょうか?
 アボジだって王になる過程では臣下たちには弱点を握られて、
 びくびくしていたでしょう。
 アボジを理解しようとしましたが、あなたが私に強要した方法は、
 息が詰まってとても耐えられるものではなかった。
 勉強がそれほど重要でしょうか?
 服装がそんなに大切なのですか?」

「王が勉強嫌いで、紐ひとつ曲がっていても軽蔑するのが臣下だ。
 勉強が国是だ」

「私があの夜、あなたを殺さずに帰った理由をご存じでしょうか?
 人がいて勉強も礼法もあるのであって、
 どうして勉強と礼法が人を締め付ける国是となるのでしょうか?
 私は王も嫌だし、権力も嫌だ」

「…」

「私が望んだのはアボジの温かいまなざしと優しい一言だけだった」
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「どうして余とお前はあの世とこの世の瀬戸際で、
 やっとこのような話をするとは…。
 私は息子を殺した王として記録されるだろう。
 お前は王を殺そうとした謀反者としてではなくて、
 気が狂って父を殺そうとした狂人として記録されるだろう。
 それでこそ世孫が救われる」

「…」

「これが我らの運命だ」

「…」

「余が王でなく、お前が王の息子でなかったならば、
 こんなことは無かっただろうな」

「…」
(荘献の息が絶えます)

「これが我らの運命だ」

「…」

「お前はどうして…、年老いた父を…、
 こんな羽目に…」
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母とピングン

「息子に辛い目をさせた母が生きて何をすると言うのか…?
 私の墓には草も生えないでしょう」

「…」

「あ~、世子…」

「オモニム! どうしてオモニムのせいなのですか?!」

「あ~、息子…、
 私の息子は私が殺したんじゃないわよね…?
 私が殺したんじゃないわよね…?
 私が殺したんじゃないわよね…?」

「…」

「あ~、私の子…、世子…」
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英祖

「慶煕宮(キョンヒグン)に戻るから、戦勝の歌を、太鼓を叩け」
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「あくどいもんだ。息子を殺した後で戦勝の歌だ…」
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<米櫃8日目>

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(死後膠着した遺体を清める医師たち)
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「千米…」

「…」

「二千米…」

「…」

「三千米…」
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…思悼世子  

「世孫の気持ちを考え、臣下たちの意を推し量って、
 世子の地位を回復させて、そのおくり名を思悼世子とせよ」
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「世孫はもう思悼世子の子ではありません。
 早く世孫をキョンヒグンのチョナの元に送らねばなりません!」

「…」
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恵慶宮(ヘギョングン:サンの母親)

「早く喪服を脱ぎなさい」

「嫌です」

「!」
(頬に平手)

「嫌です」

「早く脱いでいかねば!」

「嫌です!」
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「あなたが王位を継いで、父の恨みを解かねばなりません」
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そして14年後(1776年)のこと

「余がこうして、お前の父の思悼世子の記録を消すのは、
 お前とこの国の未来のためだ。
 誰でも、お前の父親を叙位せんとするものはこの国の反逆者と見做す」

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「これがお前と私の義理だ」

「肝に銘じます」

「今日からお前の父の名前は口に出すな。
 悲しみは悲しみだが、道理は道理だ」
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英祖は亡くなる直前に思悼世子の記録(承政院日誌)を川に流しました。

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正祖(イ・サン)の即位式

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正祖は父の墓を水原に移し、華城の建設を始めます

「アボ二ム、どうか水をどうぞ」
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「お許し下さい。
 還暦になり白い髪を結ってここに参りました」

「アボ二ムは私が殺したようなものです。
 私が生まれることなければ…。
 あの日のようなことは無かった…」
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「この立派な息子をご覧ください」

「あ~」

「どうか足を延ばしてゆっくりお休みください」
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「敬拝…」

「…」
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「余の母と父の還暦の喜びを祝って
 みなで分かち合おうと思う」
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「余が幼い時には、むごいことがとても多く、
 母上の前でも甘えて子供のように遊ぶことは皆無だった。
 そこで、今日は心行くまで遊ぶのだ」
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# 母・恵慶宮(ヘギョングン)の前で、“龍の扇子”での舞です。
映画のクライマックスを描いたのはソ・ジソプでした。

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李祘(イ・サン)は米櫃の中での父の喉の渇きに苦しんだ姿、また、「空を駈けるこの矢は何と潔いものか…」などの言葉を思い出して、舞います。

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(おわり)
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最近は本だけでなく雑誌や新聞をも読むことが少なくて、乱読も精読もしていません。
それに、たくさんのドラマを見る時間がなく、限られた時間でのブログ生活。
なので、1本の映画やドラマに集中できるかと思うと、映画『思悼』も最初は見ようかどうか迷いました。

なぜユ・アインほどの成功した俳優が、あえて悲劇を演じるのだろうかと思ったからです。
思ったとおりで、正気ではない人を演じました。
でも、クライマックスのソ・ジソプ(第22代王・イ・サン)の父を偲ぶ演技に、静かに涙ぐんだところです。
二人の演技があってこそのエンディングでした。

なお、第22代王・李祘(イ・サン)は水原(スウォン)の華城(ファソン)で母の還暦を祝いました。
行宮(ヘングン)の正殿は中陽門の先にある“奉寿堂”です。

中庸

現在この“奉寿堂”では、イ・サンによる母親の恵慶君(ヘギョングン)の還暦の祝いの模様が復元されています。

還暦
(昨年4月に撮影)

他のサイトにアップした華城です。
https://minnakorea.jp/blog/20160207-256.html

# 明日から『ドクターズ』です。
13年前から始まる第1話と第2話の舞台はナムヤン女子高。
第3話の終わりからドクターたちが全員登場します。
そして、第4話でこの二人が再会…。

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映画「思悼(サド)」 その(5)

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(INDEX)
<思悼 その1>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2884.html
<思悼 その2>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2885.html
<思悼 その3>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2886.html
<思悼 その4>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2887.html

「思悼(サド)」 その(5) 清めの川

「王位は世孫に継がせようと思う。
 お前たちのうちで、
 誰が世子の廃位を申し出ることができるか?」

「できません」

「ではなぜ余が慶煕宮に移ったと思うのか?
 なぜあの男があんなにまで狂ってしまったのか?
 師匠であるお前たちの責任だ。
 世子の廃位を申し出よ。
 これは王命だ」

英祖が去った後
(語り合うのは恵慶宮の実父や兄、叔父たち)

「ついに来たな。
 チュサンが我々を大臣にしたのはこのためだ」

「チョナは喜怒哀楽が激しく、
 どれが本心なのか分かりかねます」

「どうかお怒りを収め、世子にお慈悲をくださり、
 国事に和議がおこりますように…」
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「(世子)チョハ、どうか…、
 慶煕宮にお行きになりチョナとは和解して下さいませ」

「そうしないと臣下の皆が死んでしまいます」
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「私に臣下がいたと思うか?」

「親子でも権力を分け合うことはできません。
 あと何年か耐えることができれば王座に就けます」

「…」

「ご挨拶に伺い、
 また勉強をする振りをするのがそんなにも難しいのでしょうか?」

「そんなふうに生きるのは嫌だ。
 そんなふうに生きることはできない。
 私は私のやり方でやる」
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英嬪(ヨンビン)の還暦

# 貞聖(チョンソン)王后ではありません。
荘献は側室の英嬪(ヨンビン)の息子です。
ただし、当時の慣例により、正室の貞聖の子供として王道教育を受けたようです。
それで、ここではあえて実母を祝ったのだと思います。

「お座り下さい。 オモニム」

「…」

「還暦を過ぎて6年も過ぎたのに、
 この日にお祝い申し上げる親不孝者をお許し下さい」

「…」
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「ご安泰をお祈り申し上げます」

「…」
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「世孫は4回拝礼をしなさい」

「…」
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「チョハ、それは礼法にありません。
 大礼服をお召しになったことだけでもただ事ではないのに、
 敬拝を4回もしたとチョナに知られたら…」

「この家の家長は誰なのか?」

「…」

「今日だけは母上が王妃様だ」
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祝宴のために離宮に向かう荘献

「下がっておれ!
 中殿媽媽のお通りだ! 下がっていろ!」
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世子の廃位のための上告書を書けなかった官僚たち

「世子の廃位の上奏を拒否して首を吊ったイ・チョンボに続き、
 ミン・ベクサンやイ・フまで自決しました」

「浅はかな者たちだ。
 革命とか名分だと言いつつも、結局は荷が重くて逃亡した。
 チュサンもお悩みだろう」

「我々が解決して差し上げれば良いではないですか」

「挨拶にも来ない世子に何の情が残るでしょうか?」

「チュサンに意志があるならば…」
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# 思悼世子の歴史的な資料が破棄されたものの、この映画は残された周辺資料から思悼世子のことを浮き彫りにさせたと思います。
ただしこのシーンだけでなく、史実がサラリと描かれるので、見逃してしまいがちです。
わずか2時間の映画なので細かな解説と描写が少ないのが残念です。
英祖は荘献を世子の座から廃位させて、格下げにする程度の処遇を考えていただけでしたが、
老論派に操られていた羅景彦から10項目の罪状が提出されました。
もちろん貞純(チョンスン)王后と老論派の強力ラインの陰謀です。

「世子が尼と妓生と淫乱にふけり、内官を殺し、
 東宮の庭に穴を掘って武器を隠した。
 王を殺そうと徒党を組み…。
 これ以上は読む気がしない。
 訴状は燃やせ!」
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「いけません。 大切な証拠です」

「チョナ、このような身分の者がチョハを訴えると言うことは、
 決して一人できることではありません

「ナ・ギョンオンを裏で操っている者を見つけ出さないといけません」

「お前はなぜ宮中で起きていることを知っているのか?」

「世子に殺された内官は私の弟でございます」
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「チョハ、入ってはなりません」

「チョナ!そいつと対質させてください。
 謀反なんてとんでもありません!」

「…」

「お前はなぜこんな嘘を述べ立てるのか?!
 いったい謀反の黒幕は誰なのか?!

「あなたに殺された私の弟が黒幕です!」

「!」

「あなたは謀反してもあまりある人です!」

「チョナ!私が申し上げた話は、
 弟の無念を晴らすための作り話ですが、
 あの者の極悪非道な行為は本当です」

「チョナ!
 この者が世子を謀反に仕立てたことは決して許されないことです」

「この恩知らずの者たちめ!
 訴えがなければ世子の横暴を知ることはできなかった。
 それは褒められても、
 謀反などとこの王を驚かせた罪は看過できない。
 ナ・ギョンオンを打ち首にしろ」

「!」
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「チョナ、打ち首の前にどうか私と対質をさせて下さい!
 裏幕を暴いて下さいませ!
 私は謀反扱いにまでされたのです」
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「お前はその存在だけでも謀反だ。
 ピングンや翁主にまで刀を突きつけるとは、
 お前は屠殺者なのか?」

「全ては私の癇癪のせいです」

「癇癪…、癇癪だと?!
 いっそのこと気でも狂え!発狂しろ!
 もう顔も見たくない!
 クムチョン橋に行って、処分を待て!」
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クムチョン橋

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「あ~!」
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# どこの宮殿にもこのように水を引いて石橋が架けられています。
宮殿に入る前に“清めの川を渡る”意味があるそうです。

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この羅景彦からの10項目の訴状が米櫃事件に名分を与えました。
1762年閏5月のことです。
荘献の言い分も聞かず、何の調査もなく、英祖は荘献に自害を求めて米櫃に入れました。
お互いに責任があったとは思います。
しかし、父親への扱いの惨さにイ・サンは一生この重荷を背負うことになります。

もちろんサンは即位後に老論派の粛清をします。
ただし、裏にいた貞純王后には手を付けませんでした。
それが<朝鮮王朝>最大の国際問題を引き起こします。
1800年にサンは亡くなりますが、それを機会に貞純王后が前面に出てきて、フランス人宣教師の処刑などのキリスト教弾圧を行いました。
暗黒の時代に入ることになります。

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映画「思悼(サド) その(4)

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(2016年6月15日のクローバー)

<思悼 その1>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2884.html
<思悼 その2>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2885.html
<思悼 その3>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2886.html

「思悼(サド) その(4) 1756年のある日のこと

♪今日の霊魂、霊魂が来られましたのなら、
みなみなと珍味を召し上がって…
酒を一杯を感応して…
残った寿命と福があれば子孫に引き継がれ…
法師の法門を受けて極楽へと向かい…
悪なる心を捨てて、善なる心に変えて…
あらゆる困難と災難をさておいて…
財物と天運の福を下さるように…
そしてあの世の極楽に行き…
輪廻転生いたしますように…

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♪南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…
♪南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…

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「このままではお体が持ちません」

「…」
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「酒を注ぐのだ…。
 お前にはこれが酒に見えるのか? 
 これは私が殺したハルモニの血だ」

「チョハ! チョナが侍講院でお待ちです」

「あ~」
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「大妃媽媽と中殿媽媽が亡くなったのを口実に、
 何日も代理聴政を休んでいるから、
 見舞いに来てみた」

「…」
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「勉強は諦めたんだな?
 その姿は何だ? 下冠はどこにいったのか?
 結び目もめちゃくちゃだ…。
 お前は酒を飲んでいるな?」

「ええ、飲みました」

「世子なる者が喪中に酒を飲むなんて…。
 先月はハムギョンドの兵馬節度使が禁酒令に叛いて、
 打ち首になったのだぞ?」

「チョナ。
 世子はお酒に弱い体質です。
 酒の臭いがするのか、確かめ下さい」
(尚宮)

「は~」
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(# 以上は1756年5月の史実です)

「私が飲んだと言うのに、何を言い出すのか?」

「大人の前では犬や馬も叱ることはしないと言うのに、
 お前は尚宮を叱るのか?」

「弁明をしようとするから…」

「え~い! 耳を洗う水を持ってこい!」

その水で耳を洗い、その水を世子にぶちまける英祖

「余のせいだ。
 息子だからといってお前を世子にした私の責任だ」

「女も命を懸けると言うのに、
 誰一人として役に立つ臣下はいない!」

「…」
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<米櫃に入り、五日目の夜>

「モンかい?」

「…」

「世孫は毎日餌をくれるかい?」

「…」

「ピングンは毎日毛を手入れしてくれるかい?」

「…」

「昨夜はなぜ吠えなかったのか?」

「…、ワン! ワン!」

「お前もチュサンが怖いのか?」

モンは悲しい鳴き声を発します

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貞純王后

「そろそろ世孫を守る方法を考えないといけません」

「私は世子も守りたい…」

「お義姉さん。 どうか…。
 世孫を私に引き渡して下さい」

「え?!」

「この宮中で世孫を王にすることができる者は私しかおりません。
 世孫を私に渡してください。
 チョナは私の言葉は聞いてくれます」
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「は~、ヒョンニム! 
 一介の側室の言葉聞いて、家門の将来を託すのですか?」

「新しい王妃が来られてから、
 チョナのお身体が日に日に良くなっておられます」

「そなたがなぜそんなことを言うのか?」

「私とて家門を守らないといけませんから…」

「世孫が王になれば、
 世子を傍観していた我々は皆死ぬことになります」

「だから?」

「ええ、だから世孫の継承を防がないといけません」

「それで、その後は?」

「王妃様が王子を産めば一件落着です」

「…」

「それがだめでも頭の悪い宗親を王位に就けて、
 新しい王妃様が垂簾聴政をなされば良いではないですか?」

「そうだな。
 チュサンが謀反で死罪になるところを、
 我々の父親たちが毒を賜って、このチョナを擁立したからな」

「アボ二ム…、オラボニム…。
 私はチュサンが怖いのです」
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英祖が花嫁候補の何人かと初めて会った日のこと

「山よりも高く、海よりも深いものは何だ?」

「親の御恩です」

「お前は?」

「王様の…、御恩です」

「ではお前は?」

「人の心です」

「心か…、そう思うのか?」

「男の気概は山よりも高く、
 女の操は海よりも深いと学びました」

夜になって

「お前には悪いと思っている」

「…」

「何か頼みがあったら言ってみなさい」

「私の家門の人々の官職を上げないで下さい」

「確かに賢い王妃だ。 は~ははは」

「…」
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「余のところに現れないと言っているのではない。
 新しい母親が来たというのに、長子がなぜ挨拶に来ないのか?」

「世子が病気になって外出できないからです」

「病が治ってからゆっくり来てください」

「はい、中殿媽媽」

「どういうことか? 死病にでもかかったというのか?」
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世子とピングン

「アイゴ~、オモニム。
 新しい王妃に仕えるのがどれほど辛いことかと…?」

「チョハ、こうしている場合ではありません。
 新しい王妃に挨拶に行かないと…」

「母上にも挨拶しない親不孝息子が、
 なぜその女のところに行けと言うのか?」

「世孫が何を見て見習いましょうか?」

「世孫、世孫。 …世子!
 口を開けば世孫とばかりだ!
 お前の目には私が見えないのだろう?!」
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「世子。 この母のためにも…」

「アイゴ~、可哀想な母上だ…。
 あのおいぼれが新妻を迎えたからといって、
 糟糠の妻をいじめるのですか?」

「お願いだから…」

「分かっています。 解って…」

「…」

「明日の朝に挨拶に参りますので、ご安心下さい」
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翌朝早く

「大きさが合っていない!
 他の服を持ってこい!」
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「チョハ、他の服を持って参りました。
 お急ぎしましょう。
 中殿媽媽は朝食を取らずにお待ちしているとのことです」

「違う! これじゃない!
 他の服を持ってこい! 他の服だ!」

「チョハ!
 もう他にはございません!」

「何だと?!!」
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「オラボにはどうして遅いのですか?
 あの女は間抜けなのか奥が深いのかなんだか分かりません」

「王妃様に何てことを言うの?」

「どんな業を使うと父上があんなに惚れこんでしまうのかしら?
 手だけ繋いで寝るとか聞いたわ」
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結局は乱れた服装で…

「あの人に愛されている者たちが一堂に会しているな!」

「…」

「あの人と同じ空間では生きてはいられない」
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「あの老いぼれをすぐにでも慶煕宮(キョンヒグン)に移せ!
 でなければ皆死ぬぞ!」

「分かりました、オラボニム。
 私が何としてもそうします」
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<六日目>

「お前たち、揺らすな…。 くらくらして死にそうだ」

「まだ生きています」
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息子の世孫

「入って来てはなりません」

「どけ!」

「王命でございます」

「お前の名前と職責は何だ?」

「内禁衛将 キム・ドスでございます」

「お前の名前は覚えておく。 そこをどけ」
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「アバママ、私の妃が水を持って参りました」

「…」

「アバママ!
 嫁が水を持ってきました!
 そこから出てきてください!」

「誰も入れるなと言ったではないか…」

「息子が父親に水の一杯でも差し上げることができないのでしょうか?!」

「世孫は命令が下るまで、母の実家に行って処分を待っていろ」
422g_2016060312583459c.jpg

イ・サン

「臣下が多いからと言ってよい政治はできない」

「臣下が少なくとも王が立派なら良い政治ができます」

「賢い者を連れてくるのは簡単か?」

「王が自ら徳を施しながら連れてくると簡単です」

「お~」

「10歳にもなっていない子供が、
 ここまで見識を持っているとは…」

「…」
422h_20160603125833f25.jpg

「では堯帝王と舜帝王の徳は天まで高いと言うが、
 そこまで及ぶか?」

「どんなに高いといえども、努力を尽くせば達成ができます」

「合格だ! 合格!
 は~ははは」

「…」

「国事300年は世孫に繋っておるな。
 なぜあんな父親からこんな息子が生まれたのであろうか…?
 は~、わが家系は蛙の子は蛙と言うたとえは当てはまらないな」
422k_20160603125832624.jpg

王陵でのこと

422m_2016060312583193a.jpg

「ここにおられるスクチョン大王はどんな方か?」

「私の曽祖父にあたるこの方は、
 朝鮮王朝の長い歴史の中でも46年間王であられた方です」

「…」

「おじい様はもっと長く王でいて下さい」

「なぜだ?」

「それが王家の孝行だと学びました」

「はっはは。 では王とは何だ?」

「…」

「臣下とは何だ?」

「…」
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「この爺さんは37年間王座を守ったが、
 今では王が何なのか、臣下とは何なのか分からなくなった。
 王だからと言って刀の柄を持つものではなく、
 臣下といっても刃を持つものでもない…。
 勉強しなさい。
 そうでないと王であっても刃先を握ることになる」

「肝に命じます」

「…」
422p_2016060313000871e.jpg

荘献世子と息子の李祘((イ・サン)

「お前はハラボジと一緒に、
 スクチョン(粛宗)大王の王陵に行ったようだな」

「ええ」

「お前はそれほどにまで勉強が好きなのか?
 なぜだ?」
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「おじい様が喜ばれるからです」

「そうか…」

「私もこんな自分が嫌です」

「空に飛んで行ったあの矢が…、
 いかに潔いものか…?」
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「チョナのお許しがなかったから、
 お前たちの婚儀には参加できなかった」

「…」

「ははは、父としてすまなかった。
 夫婦とはお互いの失敗を覆い合うものだ。
 些細な礼法には惑わず、お互いに愛して、
 さらにまた愛して、限りなく愛するのである」

「肝に命じます」
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子供が老人を背負う姿の“孝”の字は、荘献世子(思悼)から息子のサン(祘)に継がれたのでしょう。
悲しみの父親の無念を背負って、サンは首都・漢陽から離れようとしました。

ドラマ『イ・サン』での、
「水原(スウォン)には両班はいない。善良な農民だけだ」との言葉が思い出されます。

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“米櫃事件”の史実と謎

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(2016.06.11)

(INDEX)
<思悼 その1>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2884.html
<思悼 その2>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2885.html
<思悼 その3>
http://jumong007.blog133.fc2.com/blog-entry-2886.html

映画『思悼(サド)』(世子)の史実と登場人物背景

1.『思悼(サド)』(世子)映画の背景

思悼(サド)世子は1735年に、英祖が41歳の時に生まれた子(母は側室の英嬪・ヨンビン)だったので、翌年の1歳の時に世子として認められました。

この映画の題材は有名な“米櫃事件”。
その8日間を通して、思悼世子の生涯が描かれます。
22歳から奇行が目立ち(躁鬱病)、これが蛮行に及んでいたことが、妻の恵慶宮(ヘギョングン)の随想録「閑中録」にも記されているそうで、映画は「朝鮮王朝実録」と合わせて、「閑中録」を資料にしているようです。
ただし、当時の記録の「承政院日記」(「朝鮮王朝実録」の原典)が破棄されているので、史実の確認ができていないのが現状です。

米櫃事件の背後には貞純王后と老論派が暗躍したことは史実なので、映画はこの点を正面から描いています。
毒薬(精神高揚・攪乱剤)の投与には触れられていないので、思悼世子の豹変は、厳しい父親から受けたストレスと飲酒によるものとしておきます。

なお、思悼(サド)は死後の尊号(おくり名)なので、以下は本命の荘献(チャンボン)または世子と記します。

2.歴史背景

映画のメイン・キャストの一人が第21代王・英祖(ヨンジョ)。
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英祖はドラマ『トンイ(同伊)』にあったように、幼少の頃の名は延礽君(ヨニングン)。
もちろん、母親は淑嬪・崔(スクビン・チェ)氏(トンイのこと)でしたが、彼女は水汲みなどの雑用係で、モンゴル語では<ムスリ(少女の意):水賜伊>と呼ばれる官婢でしたので、ドラマ『チャン・オクチョン』では「雑用係のムスリ」と呼ばれました。
ただし、延礽君はムスリの子供ではなかったという説(噂)もあります(康煕奉『謎めいた朝鮮王朝』双葉社、2015年、p92)。
これは、美しく描かれたドラマ『トンイ(同伊)』からも、『チャン・オクチョン』からも窺い知ることはできませんが、老論派が粛宗(第19代王)の元にムスリを送りこんだという政治的な背景から推測は可能です。

英祖の父・第19代王・粛宗(スクチョン)は、仁顕(イニョン)王后・閔氏が1701年に亡くなると、翌年には仁元(イヌォン)王后・金氏を迎えており、この『思悼』では、仁元王后が“大王大妃(テワンテビ)”として王室最高位の役割として登場します。

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(仁元大王大妃、側室・英嬪(ヨンビン:荘献の母)とピングン(荘献の妻:恵慶宮))

1704年、英祖・延礽君(ヨニングン)が10歳の時に、当時12歳の貞聖(チョンソン)王后・徐氏と結婚し、王后は65歳まで連れ添っています。
映画では、中殿(チュンジョン:王妃)として荘献が還暦の後の5年後に“還暦祝い”を行います。

その後、1759年に英祖(65歳)は2番目の正室として、貞純王后・金氏(当時14歳)を迎えました。
この貞純王后が大変な女性。
貞純王后は、荘献の母親であった英嬪(側室:ヨンビン)と荘献を嫌い、老論派と結託してあらゆる妨害を始めます。
ヨンビンよりも荘献よりも年下の王后なのですが、荘献にとってはそれでも継母です。
当然ながら、荘献の正室・恵慶宮(ヘギョングン)よりも年下でした。

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(貞純王后・金氏)

3.思悼世子(サドセジャ)のこと

荘献は映画にあるように2歳の時には「孝経」を暗記するほどの俊才で、10歳を超えた頃から武道にも興味を持ちました。
14歳になると英祖からは政治の一部を任されるのですが、鋭い改革の考え方をしていたので、税金や軍制に既得権を持つ老論派から徐々に嫌われます。
また、英祖が各派閥の和合を重んじたのに対して、荘献は“老論派を嫌っていた”ので、英祖とも対立・確執しました。

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英祖との確執と英祖の短気・癇癪により官僚たちの前でも怒鳴られて、恥をかかされることが多くなり、荘献のストレスが高まって行きます。
荘献の酒癖や尼僧を宮廷に引き入れたことなどの奇行には、躁鬱病が原因とされています。
ただし、その精神を病んだ原因には精神高揚剤の投与の説もあります。

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米櫃に入れられたのが27歳の時、1762年の旧暦の閏5月22日(太陽暦の6月末 # )でしたので、もう季節は蒸し暑くなっていたと思われます。
映画に出る羅景彦(ナ・ギョンオン)は東宮で働く官吏だったのですが、老論派とその背後にいた貞純王后(英祖の2番目の正室)に陥れられて、10項目に及ぶ訴状を英祖に提出しました。
彼らは荘献の“謀反説”の噂も同時に立てます。
上級クラスの官僚たちが、英祖が考えていた世子廃位案に賛同する提案書(上訴)を書くことを拒んでいたので、世子の廃位のための行動に出たのだと思います。

英祖は荘献を世子の座から廃位させて格下げにする程度の処遇を考えていただけでしたが、
老論派に操られていた羅景彦からは、
「謀反の噂は嘘ですが、世子の蛮行は事実です」と言うセリフが出ます。
英祖は謀反の噂を立てたことにより、宮廷を不安に陥れたとして官吏を処刑します。
ただし、その前に荘献は羅景彦とは直接話をさせてくれとして、「背後関係を調べもせずに処刑してはなりません!」と、
一方的に自分をも不利にさせる処罰と、裏にいる官僚と継母の行動を暗に指摘しました。

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ここからは映画の最初に戻り(1762年)、英祖が荘献に自決を求めるシーンからです。
KJSの<その1>では、映画のセリフをそのまま記していますが、要は荘献の母の映嬪が「王家を安泰にするためには、荘献を処分するしかありません」と英祖に訴え出るところからです。

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先の6シーズンほど、王朝の歴史ドラマを見ながら<王朝絵巻>を書くために本やネットで調べてきました。
そこで思ったことは、第21代王・英祖(ヨンジョ:ムスリの子:在位期間51年)が都合が良いように承政院の記録を修正したのではないかということです。
老論派-英祖-貞純王后という強力なラインが、自分たちの政権に都合よいように歴史に塗り替えたのではないかという疑問です。

その犠牲が、『チャン・オクチョン』であり、その子の第20代王・景宗(キョンジョン:在位はわずか4年)、さらにはこの『思悼(サド世子)』。
映画にも出る、第21代王・英祖による兄の“景宗毒殺?”および、英祖は第19代王・粛宗の息子ではなく、“トンイ(またはムスリ)と老論派の誰かとの子供ではなかったのか?”と、そんな疑問も拭えません。

そして思悼世子は社会正義に目覚め、さらに息子の第22代王・正祖(李祘:イ・サン)は正義を貫くためにも、漢陽(現ソウル)を捨てて、人心一新を図るために水原(スウォン)・華城(ファソン)に遷都の準備を進めた…。

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(ソ・ジソプが演じる李祘)

チョナ(殿下:전하)またはチュサン(主上:주상)、または合わせてチュサンチョナと呼ばれていた当時の王。
畏怖の念から実像画がほとんど数が描かれませんでした。
そして、幾度かの戦禍を避けて秘蔵されていたものの、ついに韓国戦争(日本では朝鮮戦争と呼ばれる:1950年)の際に、プサンの大火で焼失。
わずかに残った王と世子の実像画も半焼しており、6枚が復元可能でした。

(英祖が50歳の時の実像画で国立故宮博物館で特別展示されることがあります)
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(昨年12月撮影)

# 閏月(うるうづき)
1762年には5月が2度あったということになります。
ウィキペディアによる解説は次のとおりで、ちょうど今頃の気候のようです。

太陰暦は、空の月の欠けているのが満ちそして再び欠けるまでを「一か月」とし、それを12回繰り返すことで12ヶ月すなわち「一年」としている。
しかしこの月の満ち欠け(平均朔望月 = 約29.530 589日)による12ヶ月は約354.3671日であり、太陽暦の一年(約365.2422日)とくらべて約11日ほど短いので、この太陰暦をこのまま使い続けると暦と実際の季節が大幅にずれてしまう。
このずれは11 × 3 = 33日つまり3年間で1か月分ほどになる。
そこで太陰太陽暦ではこの太陰暦の12ヶ月に、約3年に1度、1ヶ月を加え13ヶ月とし、季節とのずれをなるべく少なくする調整をする。
この挿入された月を閏月という。

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映画「思悼(サド)」 その(3)

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(2016.06.10)

「思悼(サド)」 その(3) 傷だらけの世子

「何だ?この着方は? 
 仕事には切れがあるというのに、服装となると…。
 しっかりと紐を結べ」

「…」

「そうやって、てきぱきと処理して気持ち良いか?」

「…」

「なぜ朝廷をお前の方と父親の方とで分離させるのか?」

「息子の道理で、父上のために軍権と人事件だけは…」

「それを知らずに私が野放しにしていたと思っているのか?!」

「?!」

「私が一生かけて、
 朝廷の和合のために尽くしてきた公平な政治を、
 お前は1日で崩してしまったのだ。
 王とは何かを決定するのではない
 臣下が決めたことを容認して、その責任を負うものだ」
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「ハムギョンドの査察使からの報告では、
 ソンジンに防御営をキルジュに戻したいと申しています」

「…」

「キルジュは9つの道を全て防衛することができますが、
 ソンジンでは3つの道しか防衛できないからです」

「キルジュに戻したらソンジンではどうやって防衛するのか?」

「一部の兵力を残すことで問題ありません」

「ではその方が良いな。
 兵曹で協議してそのようにしなさい」
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「ではそのように従います」

「ちょっと待て、ちょっと!
 余がソンジンに移したのはそれなりの事由があっての事だろう?
 余の前で覆すと、余の顔が立たないだろう?」

「?!」

「そなた達は、世子を盾にして、余を無視するのか?
 え?!」

「…」

「お前が国防について知っていることは何か?」

「…」

「ハムギョンドに行ったことがあるのか?」

「…」

「防御営はそのままにして、
 重要なことは余に相談した後にそなたたちが決めよ」

「…」

「次は何だ?!」

「チョハ、先日は守御庁から銀を借りました。
 守御庁では税金として米300俵を収めねばなりませんが、
 我々が返す銀と引き換えだと言って、米を納税しません」

「チョハ、守御庁(ホジョ)判書の言うことは一方的な主張です。
 守御庁で変乱に備えて溜めた銀はやはり返却するべきもので、
 米の納税を求めることは過酷です。
 どうして、清からの使者をもてなすための銀を、
 国に治める税金の肩代わりになるのでしょうか?
 チョハ、どうかご処決ください」

「どういたしましょうか?」

「こんなことも一人で決断できないのか?
 代理にした甲斐がないな」

「…」

「それぞれが、銀を返し、米を納めればよいではないか」

「そうしなさい」
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「次!」

「全羅道からの報告です。
 ホナム地方では4か月も雨が降らず、飢饉でございます。
 チョハ、どうしましょうか?」

「…」

「雨が降らないのは余の徳がないからだ。
 どうして世子に尋ねるのか?」

「いや、私が代理聴政しても雨が降らないのは私に徳がないからだ」
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「チョハ、これからチョナをお訪ねしましょう。
 参観すべきです」

「丈人(チャンイン:妻の父)…。
 代理聴政というものは元よりこういうものですか?」

「今はしばし耐えるしかありません」
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# ここで荘献を支えているのは妻・恵慶宮の父・洪鳳漢(ホン・ボンハン)。
しかし、最後まで守りきることはできませんでした。
『華政』の貞明(チョンミョン)公主と夫の洪株元(ホン・ジュウォン)の3~4代ほど後の、名門・洪家の家長です。

「嫌だ」

「チョハ…」

和合だと言いながら、
 臣下たちの顔色を伺うのが公平な政治なのですか?」
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李麟佐(イ・インジャ)の乱(#)

「キョンジョン大王(景宗)を殺したあなたが、
 なぜ王なのでしょうか?!」

「まだ毒殺などと言うのか?
 余が即位した際には、
 既に根も葉もないことだと判明していたではないのか?」

「ではなぜ、イ・インジャが反乱を起こしたのですか?!
 あなたを王としては認めたくなかったからでしょう!」

「そいつの口を裂け」

「俺一人殺したくらいでは世の中は変わらないと思っているのだろか?!
 あなたのような雑用係の息子が、
 なぜ偉大なスクチョン大王の息子なのですか?!」

「は~、そいつも裂け」

「!」
300f_2016060215513687b.jpg

ワン公と遊ぶ世子

「清から来たお前は犬の中では王かもしれないが、
 ここは朝鮮だ。
 そうやって吠えていると野良犬の仲間に婿入りさせるぞ…」
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「変わったことは無いのか?」

「ええ」

「なぜ私のところには来なかったのか?
 勉強していたのか?」

「…」

「父はこうやって夜まで仕事しているというのに…。
 もういい」
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王陵に向かう雨の日

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「お前は全羅道に行くイ・ウィギョンに、
 “読書は楽しい”という詩を送ったそうだな?」

「はい」

「なぜお前が読書が楽しいなどと書くのか?
 お前はその詩でイ・ウィギョンを騙しただけでなく、
 ホナムの人々まで騙したことになる」

「…」

「お前がそんな嘘をつくから、
 ホナムに降るべき雨がこの王陵に降ったではないか?!」
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「それに余の前で正直な振りをするな。
 お前は偉大なスクチョン大王の墓を参る資格はない」

「…」

「もう帰れ。
 チッ! 息子がもう一人いたなら…」

「…」
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<4日目の炎天下>(#)

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「あ~、あ~。
 水を持ってこい!
 水だ!」
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「やあ、芝生が乾いたから水を撒け」

「は~」

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(小水まで飲む荘献世子)
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竜の絵(息子の誕生の頃)

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「媽媽、ゆっくり息を吐いて下さい」

「息子です! 
 昨夜は夢に青竜が出てきたのです! 
 青龍!」

「…」

「世孫ですよ! 世孫!」

「コマプソ、世子…。
 これで私もご先祖様に顔が立つ」

「チョハ、この絵は扇子にしましょう。
 後々世孫が即位するに際してお納めいたします」
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息子・サンの誕生

「心からお祝い申し上げます、媽媽」

「これからハラボジにご挨拶に行くぞ…」

「100日を迎え世孫がご挨拶です」

「…。
 ああ、これでもういい。
 連れていけ」

「…」

「王妃様の還暦が明後日なのにチョナが何も仰せにならないので、
 準備を始めることができません」
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若い側室を叱る大王大妃

「ヨンビン媽媽。
 チョナが何も言われない時にはそれなりの理由があるのでは?」

「どうしましょうか?」

「それでなくとも激務なのに、
 側室たちまでもがそんなことでチョナを悩ませるとは…」

「…」

「ムンソウォン。 そなたが…」

「うるさいから、下がっていなさい!
 あ~、下がれ!」
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「チョナの寵愛を受けているからといって、
 世子の生母に盾突くなんて…、なんと…」

「!」

むち打ち

「この不届き者め!
 あくどい性癖を根こそぎにしてやる!」
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英祖が入って来ます

「皆下がれ!」

「チュサンがいかに中殿に情がないとはいえ、
 明後日には中殿の還暦というのに何も仰せではない…」

「…」

「これはチュサンの意思なのか?
 それとも、ムンソウォンの意思なのか?!」

「ム…」

「王妃の還暦を祝いたいヨンビンの心の方がどれほど美しいものか…」

「…」

「同じ側室の立場で、ヨンビンの心使いを学ぶどころか、
 身勝手にヨンビンに盾突いたので、
 この私が内命婦の法度を立てました」
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「大妃がこのような事をなさるなら、
 もはや私は王でいられません」

「何ですと? 
 あの卑しい者のお腹にチョナの血筋がいるということで、
 肩を持つのですか?」

「卑しい? 卑しいのですか?!」

「…」

「この卑しい私を王にしたのは大妃です!
 そうであれば王座から降ろして下さい!」

「!」

「世子に王位を譲りますから、許可して下さい!」

「…」

「…」

「そうか…」

「…」

「そうしましょう。 許可しましょう」
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「いけませんチョナ!
 どうか譲位のお考えを取り下げて下さい」
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「余がこの座には欲心がなかったと何度言えば解るのか?!」

「…」

「すでに王室の最高齢であられる大妃の許可を受けた!」
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「大妃媽媽、このままでは世子がどうかなってしまいます。
 許可をお取り下げください」

「いつもいつも、
 しょっちゅう王なんてやってはいられないと言って、
 世子を悩ませるチョナの悪癖です」

「私が根を断つ」

「しかし、これまで世子を守ってこられたのは大妃媽媽でございます。
 今、世子を助けることができるのは大妃媽媽だけです」

「私はいかにも女ではあるが、一国の大王大妃である。
 一度許可したことをどうやって取り下げられるものでしょうか」

「しかし、このままでは世子が死んでしまいます」

「どうかお救い下さい、大妃媽媽」

「では私が死ねば良いのだ。
 これからは食事を持って来るではない」

「大妃媽媽…」

「年を取って、耳が遠くなった。
 チュサンの言葉を誤って受け取って許可したと言いなさい」
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「世子、チョナは既に外の別宮に外出なさっている。
 中に入りましょう」

「お帰り下さい。 オモニム…」

「チョハ…。
 大妃媽媽が許可を取り下げになりました。
 どうか立って下さい」

「…」
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大王大妃の死去

「黙っておればお前が王になれたのに…。
 許可を取り下げさせるだけでなく、死に追いやるとは…」

「私の不覚でした」

「卑劣な奴め。
 お前の負けん気を知らないとでも思っているのか?」

「あ~、ええ!
 全部私のせいです!」
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米櫃の中の温度はいかほどだったのでしょうか?

1762年の閏5月22日が“米櫃事件”の初日でした。
太陰暦なので、閏5月は2回目の5月で、太陽暦にすると6月22日(またはそれ以降)です。
この今日のブログとほぼ同じ気候の頃のことでした。

# 李麟佐(イ・インジャ)の乱

突然で分かりにくかったのがこのシーンでした。
これは、首謀者の名をとって「李麟佐(イ・インジャ)の乱」の模様です。
名分は「英祖による景宗毒殺」と「英祖は粛宗の血を引いていない」というものでした。
当時の人々を疑心暗鬼にしていた問題で、“謎めいた”王朝の秘話です。
(康煕奉「謎めいた朝鮮王朝」双葉社、2015.04. p.110)

# 次回は27日、歴史の背景と登場人物について振り返ります。
本編は28日(その4)に再開(予定)します。

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映画「思悼(サド)」 その(2)

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(end of May)

「思悼(サド)」 その(2) 10代の頃

「本当に美しい娘を迎えた。
 今日は世子からの礼服ももらったことだし、
 一言言っておく」

「…」

「世子にはこの上なく仕え、
 言葉や顔色が軽々しくてはならない。
 何を見たとしても、宮中では知らない振りをしなさい」

「世子の前であっても、むやみに服をはだけてはならない。

「…」

「紅が美しいとはいえ、
 夫の服に付いた紅は美しくはないから、付けないように」

「…」

翁主(側室の娘)がわざと変な顔を見せて、ふざけるものだから、笑い出す世子

「「お前はなぜ笑っているのか?」

「ははは」(#脚注あり)
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「翁主(オンジュ)が、
 将来の世子の王妃(ワンビ)になる者とは、
 肩を並べて座ってはならない」

「曲座の礼法通りにしなさい」

「…」
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「チョナに仕える際にひとつ注意をする」

「…」

「私は王妃とは名ばかりだ。
 チュサンを長きに支えたヨンビンが話しなさい」
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(中殿: 王妃)

「チュサンは言葉をお選びになる。
 “死”とか“帰”の字はお嫌いだ。
 また、ジョモ会の後や、
 外出後の服は着換えた後に部屋の中にお入りになる」

「…」

「不吉なことを聞くと、寝殿に入る前に歯を磨き、
 耳を洗ってお入りになる。
 嫌いな者を呼びつけて、“変わったことはないか?”と聞き、
 不浄な物は焼いて中にお入りになる。
 良いことと悪いことをなさる時には、入る門も違う。
 いいことには満安門から、悪いことには慶華門からお入りになる」

「…」


「また、愛する人がいるところには、
 愛してはいない人が一緒にはいないようになさる」
(ヨンビン)

「…」

「チュサンはこのように、
 愛と憎しみを表すことには計り知れないほどに明らかだ。
 世子姫(ピングン)は嫌われないように特段の注意が必要だ。
 あ~、どれほどお堅いつもりの方なのか…」
(大妃)

「…」
200b_20160602154306825.jpg
(大妃、側室・ヨンビンとピングン)

ピングンの両親・親類たち(洪家)

「ピングン媽媽、
 宮廷の大人たちの話をよく聞いて、気を付けて下さい」
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「アボニム、オモニム…」

「ピングン媽媽、めでたい日に泣かないで下さい」

「そっとしてあげなさい。
 他の者たちは王家の姻戚となることを羨むが、
 私たちは家門の災いとなると考えて、警
 戒しないといけない」

「…」
200d_201606021543037f0.jpg

愛犬

「チョハ、清国の皇帝からの贈り物です」

「お~、お前の名前は?」
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「アバママがどれほど凄いか知っているか?
 勉強では家臣も勝てないんだ」

「…」

「でもアバママを怖がらないでくださいね。
 私がいるじゃないか。 私が…」

「…」

「アバママの目にも、ピングンは合格です。
 合格」

「ええ」

「こら、ワンころ。 静かにしなさい。
 しっかりとつかまえていなさい、ピングン」

「…」

「本当に美しいピングンを迎えた。
 世子に仕える時は、いつも笑顔を忘れず…」

「…」

王(英祖)が現れます

「!」

「チョハ、侍講院のお時間です」

「!」
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「道也者 不可須臾離也 可離非道也…。
 道とは一時も離れることができないもので、
 もし離れることができるならばそれは道ではない」
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「莫見乎隠 莫顕乎微 故 君子 慎其獨也…。
 隠れているもののように表われることなく、
 微細なもののように表われることなく 
 よって君子は一人でいてはならない」

「合格」

「合格だと? 
 君子 戒慎乎其所不睹 恐曜乎其所不聞…。
 この一字でもなく、一行を忘れたというのに合格なのか?
 世子とはいずれ王となり国の根幹となるものだ。
 お前が国を滅ぼす者になるとしか思えない」

「…」

「この本はお前のために徹夜で作った。
 これも覚えられないのに、
 これから何の勉強をするつもりなのだ」

「…」

「一年に何度くらい勉強する気持ちが湧いてくるのか?」

「1~2回です」

「何だと?!」

「え?!」
200gg_20160602154444560.jpg

「チョハ、1~2回とは謙遜が過ぎます」

「師匠。私の心は私が知っています」

「アイゴ、そうか。 正直でよい。 正直だ。
 私がお前の頃は、
 一時でも勉強できなくなるのではないかと恐れたものだ。
 お前はこんな良い環境でも勉強を怠って…」

「チョハは難しい経典には興味を示されませんが、
 西遊記や守護伝など…」

「何だと?!
 一国の世子にそんなものを読ませるのか?」

「チョナ、あまり慌てずに。
 素質が素晴らしいので、自発的に勉強するほどになるまでは…」

「この子の真っ黒な顔を見てもそんなことが言えるのか?」

「…」

「毎日炎天下で遊びほうけて…、
 遊びは一時の味で、学問は一生の味だと何度言ったことか…。
 まったく…」

「…」
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<米櫃に入れられて3日目>

夜になって、米櫃の中にムカデが入って来ます

「!」
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「開けろ!」


世子は米櫃を蹴破って、池の中に飛び込んで暴れます

池に飛び込むサドに、
「チョハ!
 こんなことをなさってはなりません!」

「いっそのこと、毒薬を飲ませてくれ!」

「チョハ!
 こんなことをしていたら世孫までも巻き添えになります」

「息子を殺して、孫を殺して、皆殺しにさせよ!」

「チョハ!」

「みんな殺して、千年万年ひとりでやりやがれ!」
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「捕えろ」

「放せ!何で全部が私一人の責任なのか?!
 あなたがこれまで私にしてきたことを考えろ!」

「お前にはそんなことを言う資格はない」

「そんなに自分が悪くないというなら、
 皆殺しにしろ!」

「閉じ込めろ」

「これが人間がすることなのか?!」

「結んで、芝生で覆え」

「!」

見ていた王は、今度は米櫃を縄で縛りあげるよう指示

200n_2016060215460351c.jpg

<成人してからの世子と英祖>

「私家では親が子を慈愛で育てるが、
 しかし、王家では子を恩讐のように考えるという。
 なぜだか分かるか?」

「子を思う親心とは皆同じではないでしょうか?」
200p_201606021546022fc.jpg

「違う…。ここに来るたびに思う。
 先祖たちの血の気が混じった鳴き声が聞こえてくる。
 こちらは46年間王であられた父上だ。
 スクチョン(粛宗)王の位牌だ」

「…」

「この方は妻に毒を賜れた」

「…」
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「この方は余の兄の景宗(キョンジョン)王だ」

「…」

「人々は余が兄を殺して王になったと言う。
 そちはどう思うか?」

「党派のためならどんな嘘もでっち上げられます。
 どうかあまりお気になさらないように」

「ここには兄弟や甥までも殺して、王位を守った王が眠っている。
 恩讐のように子を育てるということ。
 分かったか?」

「…」

「お前が王になったら分かるだろう」
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王位の禅譲を考えていた英祖

「なりませぬ。
 なぜこのような重い命令をなさるのでしょうか?」
(老論派)

「私は25年間、この日を待った。
 もう、世子が成人したのだから、王位を譲る時が来たのだ」

「王位を譲り国事を任せて、勉強の時間を妨げるのですか?」
(小論派)

「余はもとよりこの座には欲心がなかった。
 みなも知っての通りで、
 兄のキョンジョン(景宗)の跡継ぎがいなかったからで、
 しばし引き受けたつもりだった」

「チョナの本意を私どもは知っております。
 私ども、以前にもましてお仕え申し上げます」

サドは
「チョナ、どうか命令を取り下げて下さい!」

「あ~、まったく。では代理聴政はどうか?」

「…」
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洪家(妻・恵慶宮の実家)の家臣は

「訓民正音、四郡六鎮、測雨器は世宗の業績として有名ですが、
 実は息子のムンジョン(文宗)が代理聴政で成し遂げたことです」

「したがって、
 代理聴政はせいぜい元手とも言われます」

「師匠方々、代理聴政はチョナのためであって、
 私のためではありません。
 心配なさらないで下さい」
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「しっかりやってくれ。
 息子が上手くやれば、父も上手くいく」

そう言われててきぱきと問題を解決する世子

「チュサンの仰せのとおり、
 一人2枚だった軍保布を1枚に減らしても、
 国防予算は80万両足りません」

「戸曹(ホジョ)で考えた代案を言って下さい」

「地方官庁に公務処理費用と予備費を転用して12万両、
 兵役忌避者を摘発して、
 軍保布を1枚賦課して5万両。
 合計17万両を確保可能です」

「では残る63万両は?」

「…」

「両班たちが所有する全国80万町歩から、
 1町歩あたり半両の土地税を課して40万両」

「チョハ。
 両班は兵役を負担しないのが国法です」

「あなたたちは口を開くたびに、
 朝鮮は平民の国だとはやし立てるくせに、
 なぜ平民だけに兵役を課すのか?
 貧しい平民にだけ課すのか?」

「…」

「王室も宗親も率先して模範となり、
 漁場税、塩田税、船舶税を10万両差し出す。
 それでも足りない13万両は、
 放漫な5軍営の組織を統廃合して、
 節減にあたるというのはどうか?」
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「チョハ、軍権にかかわることはむやみに手を付けてはなりません」
(老論派)

「なぜだ?」
(世子)

「チュサン・チョナが即位されるに当たり、
 我々と約束したことがあります」
(老論派)

「その約束を口実に、
 この者たちが25年間も軍権を独占した結果、
 弊害は1つや2つではありません」
(小論派)

「何だと?!」

「この問題はそこまでにしておけ」
(英祖)

「チョハ!
 一部の党派が軍権を独占することは廃止すべきです」
(小論派)
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「軍隊の中で党派によって、
 内部分裂することを容認できると思っているのか?」

「チョハ。それは5軍のなかで、
 武官たちが親交を深めるための集まりに過ぎません」

「この国の軍隊は、
 あなたたちの親睦を深めるための組織なのですか?
 王の軍隊になぜ党派が生じるのか?!」

「…」

「今日から守御庁、御営庁、総戒庁、禁衛営、訓練都監の、
 すべての党派を廃止し、
 チュサン・チョナと兵曹判書と5軍営の、
 すべての命令体系を統合して一本にする」
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「潔い処置でございます」

「はっはっは~。
 あの者たちがチョナの即位を手伝ったからといって、
 軍権を握っていたが、とんだ好敵手が現れたものだ」
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「お義姉さま、いいですね」

「容姿も気性もチョナよりも、
 世子の方が堂々としているからでしょう?」

「ほほほ…」
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しかし…。

「軍と兵役の問題は先代のスクチョン大王の頃からの懸案でした。
 しかし…」

「分かった」

「軍権はチョナと私たちの義理が関わって…」

「もうよせ」

「え?!」
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# 最初の結婚式のシーンで荘献が笑い出したのは、和平翁主がおどけた顔をして兄の荘献を笑わせたからです。

英祖には2番目までの二人の正室と4人の側室がいました。
映画の荘献世子は第2側室の英嬪(ヨンビン)・李氏の息子です。
さらにヨンビンには3人の娘(翁主:オンジュ)がいて、それぞれの名は和平、和協、和媛でした。
翁主が“オラボニ”と荘献を慕うシーンも出ます。

# 荘献の改革

映画『思悼』では英祖が「(派閥の)和合」という言葉を使います。
しかし、息子の荘献(チャンボン:思悼世子)は代理政治の際に、これに鋭く反論して、「税の負担では両班も政務を果たすこと」とし、「王の軍隊にも派閥があって良いのか?!」と言葉を荒げます。

歴史の本では、<朝鮮王朝>第21代王・英祖(ヨンジョ)と第22代王・正祖(チョンジョ:『イ・サン』)がそれぞれ派閥政治を改革しようとした功績が書かれています。
政治手法は同じく“蕩平政治(タンピョンチョンチ)”と呼ばれました。
しかし、内容は違います。
英祖は派閥の解消を図るのですが、正祖(イ・サン)は派閥にとらわれない能力主義と若手の登用を求めました。

正祖(サン)の父・思悼世子の“義”は、こうしたことであったと思います。
サンがその遺志を継いで、両班も派閥もない水原・華城に遷都したいと考えた原点も、この思悼世子の“義”にあったと思います。

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映画「思悼(サド)」 その(1)

30cmほどのタイサンボクの花が咲いています。
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(# 東アジアに自生する木で、済州島のハルラ山ではタイサンボクが茂っていました。
この時期にはたくさんの花を楽しめるのでしょう…)

映画 『思悼(サド)』

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♪今日の霊魂、霊魂が来られましたのなら、
みなみなと珍味を召し上がって…
酒を一杯を感応して…
残った寿命と福があれば子孫に引き継がれ…
法師の法門を受けて極楽へと向かい…

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「オモニ!
 今、世子が刀を持って、
 慶煕宮(キョンヒグン)に向かわれました」

「アイゴ…」

「もしも殿下(チョナ)に何かあれば…、
 今からでも止めないと世子だけでなく世孫も…、
 みな死にます」

「…」
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♪南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…

「…」
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「思悼(サド)」 その(1) The First Day

一日目

「昨夜のことを世子の母親の私が申し上げるのは、
 ただただ殿下の御命を守る為です」

「ヨンビン…、そなたは忠臣だ。
 そなただけが忠臣だ」

「世子があんなことを犯したのは、病のせいです。
 処分は勿論ではありますが、どうかご慈悲を…、
 世孫だけは生かして下さい」
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「どちらの門になさいますか?」

…満安門

…慶華門

「慶華門…」
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「チョナはどの門をお通りでしたか?」

…慶華門です。

「世孫も連れていこうか?」

「…」

「夫よりも子供が可愛いと言うわけだな…」

「…」

「真に忌まわしく恐ろしい人だ…」

(恵慶宮・ヘギョングン: 世子の妻)
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「この処分は世子の生母からの願いである」

「なぜ側室の願いだけを受けて、
 国の根幹を揺らがせるのでしょうか?」

「…」
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「冠と袞竜(こんりょう:王衣)を脱げ」

「…」

「そなたは私を殺そうと、既に喪服を着ているようだ…」

「大妃媽媽と王妃様の葬儀の時から、
 これまでずっと着ている喪服です」

「3年も過ぎて、そんな言い訳をするのか?!」

「…」

「これを何と説明するのか?
 ひそかに墓穴を掘って、
 喪服を着て、余を呪ったのではないか?」

「殿下こそ、私を死に者のように扱われるので、
 ええ、自分で自分の墓を掘ったのです」
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「昨夜はお前が…」

「…」

「単刀直入に言うが、自決しろ」

「…」

「余が死ねばこの国が亡びるが、
 お前が死ねばこの国の300年が安泰だ」

「朝鮮の国法に自決という刑罰がありますか?
 私に罪があるのならば、義禁府に引き渡して下さい」

「これは国事ではなく、お家の事情だ」

「…」

「余は今、父親を殺そうとした息子を罰しているのだ。
 今死ねば、世子の名は残せるだろう」

「いつから私を世子として、
 息子として接して戴いたのでしょうか?」

「…」

…チョナ、どうか再考下さい!

「オモニ…、アボジがどうして…?」
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「世子が死ねば俺たちはどうなるのか?」

「仕えた者は皆殺しになります。
 俺たちだけでなく、家門までも潰される…」

「今あなた達の家門を心配している場合でしょうか?
 国が潰れようとしているのに…」
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刀を持つ世子

「チョハ! お待ちください!」

「放せ! 放せ!」

「いけません、チョハ!」

「!」
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「チョナ~!私もどうか殺して下さい!」

「私を先に殺して下さい!」

「チョハ、いくら殿下でも、
 経国大典にない罰則は下すことはできません!」
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「追い出せ!」

「…」

「米櫃だ。…米櫃を持ってこい」

「!」

「米櫃の中に入れ」

「…」
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「釘を打て」
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「…」
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「アバママ! 出てきてください!」

「今すぐ、世孫を連れ出せ!」

「チョナ! どうか父上をお助け下さい!」

「…」
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「お願いでございます!」

「誰も来るなと言ったではないか?!
 世孫まで米櫃に入れろと言うのか?!」

「父上のことまで私がやります。
 読めと言われれば、父上の替りに何でも読みます。
 チョナの言う通りに何でもいたします!
 父上をお救い下さい!」

「早く連れていけ!」

「父上!
 どうか出てきてください!」
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<時は戻って…(世子の幼少の頃)>

「贅沢か…?
 何が贅沢で、何が贅沢ではないのか?」

「絹は贅沢で、木綿は贅沢ではないです」

「ははは~、
 世子はその紙を誰に差し上げるのか?」
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「チョハ…、
 この年寄りの余命を捧げますゆえ、
 どうか末永くご安泰に…」

「ええ」
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大妃(テビ: 英祖の母親)、中殿(英祖の正室)、側室(ヨンビン:世子の母親)

「アイゴ~、世子は食べる姿も可愛らしいの~」

「世子はこの頃は何の書を読んでいますか?」

「孝経を読んでいます。王妃様」
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「孝とは何と書いてありますか?」

「“孝”とは、杖をついている年老いた父母を、
 子がおぶっている姿を意味します、オモニ…」
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「世子は誰をおんぶしてくれるのかしら?」

「アイゴ~、何と可愛い…」

…チョハ、侍講院でのお勉強の時間です。

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侍講院

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…子曰 愛親者 不敢悪於人
(うとうと)

…敬親者 不敢慢於人
(うとうと…)

「チョハ、寝ている場合ではありません。
 孝経の意味をご存じならば、
 こうしてはいられないはずです」

「…」

「明後日はチョナの前で試験があるというのに、
 どうするつもりですか?
 勉強することが親孝行です」
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夜になって

「オンマと一緒に寝たらだめなの?」

「世子は一人で寝るのが決まりです」

「チェ尚宮。今日だけでも一緒に寝たらダメかしら?」

「それは王家の掟にはないことです」

「世子殿下はもう中殿のお子で、
 奥様の子ではありません」
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「チョナ、寝殿にお入りになる時間です」

「父が子のために本を作っているのだ。
 お前だったら眠くなるか?
 ははは…」

そして2日目

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「殿下のお申し付けどおりに、
 世子の非行に連累した者たちを逮捕しました」

「承旨(スンジ)・チェ・ジェゴンは世子を平民にする教示を書け」

「私は国の臣下でございます。ご
 命令を賜るための名分が必要かと思います」

「ははは、そうか。 ではト承旨が書け」

「私もできかけます」

「…」

「チュサンも無理に理屈をつけるようになられたな…」

「紙と筆を持って参れ」
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「毒薬を賜れば良いのでは…?」

「いや、今賜毒すると世子が謀反者になる。
 息子が謀反者ならば父親も謀反者となるのだ。
 それが明国の刑法に従う朝鮮の国法だ」
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教示の読み上げ

「世子の持って生まれた才能が優れており、
 嬉しく思い愛したが、
 10数歳ころから勉強も怠り、代理聴政以降には病気にかかり、
 淫乱と悪行に明け暮れた。
 病状が苛酷な時には本性を失い、内官を殺した。
 妓生たちと昼夜遊びくれて、
 大殿には挨拶に来ることもなかった。
 さらには宮廷の庭園に墓を作り、
 とても言葉では表せないことをしたために、
 世子の母のヨンビンが言うには、
 自分の余生も残りわずかだと、大処分を願い出た。
 ゆえに世子を廃位し、平民にして閉じ込める」

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(世子の放蕩に係った妓生や尼僧なども処刑されます)

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映画のアップにあたり、まずは映画の公式サイトからのコピペです。

李朝最大の謎とも言われ、18世紀の朝鮮王朝において王権争いが激化した時代を舞台に、王が王位継承者である実の息子を米びつの中に入れて餓死させたという衝撃の史実を描く「王の運命―歴史を変えた八日間―」が、6月4日よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開される。

実力派俳優ソン・ガンホと、2015年最大のヒット作「ベテラン」で今、波に乗っている俳優ユ・アインの最強タッグの共演が大きな話題呼んだ今作で、映画「会社員」以来3年振りのスクリーン復帰を果たしたのが、ソ・ジソブ。
95年にモデルとして芸能活動を始めて、2004年のドラマ「パリでの出来事」「ごめん、愛してる」で熱狂的ファンを生んだ後、「映画は映画だ」で「青龍映画賞」など多くの賞に輝き、俳優としての実力の高さを立証。
幅広い分野で活躍の幅を広げてきたソ・ジソブが本作でスクリーン復帰。しかもノーギャラで特別出演を果たしていた。

演じるのは、ユ・アイン演じる思悼世子の息子・正祖役で、出演シーンはそれほど多くないが重要なシーンを担っている。
かつて、出世作「映画は映画だ」でも興行結果に見合った歩合制でギャラを受け取る条件で、出演を決めたことがあるソ・ジソブ。
本作は世界に名の知れた韓国実力派のベテラン俳優ソン・ガンホという大俳優の映画。
自分が最後を飾るのは負担だったからという理由でノーギャラ出演を取り付けたうえで、出演を決めたという。
本作への出演に関して、
「出演シーンの多い少ないにかかわらず、役が重要だと思った。シナリオが良かったので出演を決めた。自分がはたして、うまく演じられるのかと悩んだが、現場に入ってみると、本当に楽しい撮影だった。チャンスがあれば、次の作品でイ・ジュニク監督とまた仕事をしたい」と語った。

【STORY】
朝鮮第21代国王の英祖(ソン・ガンホ) は40才を過ぎてから生まれた息子・思悼(ユ・アイン) を、自分と同じく学問と礼法に秀でた世子(セジャ=王位継承者) に育てあげようとする。
だが父の望みとは裏腹に、思悼は芸術と武芸を好む自由奔放な青年へと成長。
英祖が抱いていた息子への期待は怒りをと失望へと転じ、思悼もまた、親子として接することのない王に憎悪にも似た思いを募らせていく。
心のすれ違いを埋められぬまま二人の関係は悪化の一途をたどり、ついには謀反にかこつけて、我が子を米びつに閉じ込めようとする英祖。
もはや誰にも止められぬ哀切と愛憎の8日間の行方は──。

監督:イ・ジュニク(「王の男」「ソウォン/願い」)
撮影:キム・テギョン
美術:カン・スンヨン(「王の男」)
音楽:パン・ジュンソク(「ソウォン/願い、」)
出演:ソン・ガンホ(「殺人の記憶」) ユ・アイン(「ベテラン」) ムン・グニョン(「ダンサーの純情」) キム・ヘスク(「10人の泥棒たち」) チョン・ヘジン(「テロ、ライブ」) ソ・ジソブ(「会社員」)

2015年/韓国/125分/原題:「사도」/配給:ハーク (C) 2015 SHOWBOX AND TIGER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
公式HP:http://ounosadame.com/

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